当日は朝10時より下準備のお手伝いをしていました。
前日には、作家とギャラリーのオーナーが、菓子折を持って管理人さんにご挨拶し、10軒ほどご近所の挨拶回りをしたようです。

当日の準備は、ギャラリー内と路上にある車・バイク等のビニール保護と、前日より解凍していた業務用ホイップ・クリーム(明治乳業・1500mlx10x5箱=100個分換算。)の紙皿への盛りつけ。

最初は、他に集まっていたお手伝いの方々と試行錯誤的に『こんなかな?』ともりもり盛っていたのですが、気が付けば、お料理・お菓子づくりの得意そうな女の子たちが、ホイップ・クリームのデコレーションによるかわいいパイ作りを始めており、思わず『かわいい!』と叫んでしまいました。もうこれを並べるだけで、充分作品になりそうです。ギャラリー内は足の踏み場のないほど、真っ白くてかわいいパイでいっぱいになりました。 はじめは絶対当たりたくないと思っていたのですが、かわいいパイを目の前にすると、不思議と当たってみたい気になってきました。

開始予定12時00分の約15分前。外を覗いてみると、身内のスタッフ数人しかいません。皆それぞれに、何処からともなく大勢の人が来ると信じて疑っていなかっただけに、ちょっと不安になりました。はたして本当に水着ギャルは来るのか?もしかして身内だけでやったりして。しかし、それでもまあ楽しいか、と思うようになっていました。

卒業の時期であり、袴姿の女学生がちらほらしていたので、大通り(青山通り)に出て、チラシを配ったら今すぐにでも人が来るのではないかとか、渋谷で女子高生ナンパしてこようか、よっぽどのナイス顔な男でないとここまで連れて来れないね、とかいう会話をしていました。

そういう中でも、仲間(?)の登場に心強くさせられることが度々。朝10時より、パイ投げ掲示板(パイ投げ専門ホームページ<後に詳述>)をみて、『お手伝いに来ました』と、単身訪れていただいた青年・Oさん。『着替えてもいいですか?』とやって来て、ランニング姿になった、体格の立派な(笑)おしょうさん。

そんな頃からだんだん本番の盛り上がりになってきて、気づけば部屋の中は、持参した着替えで準備する人が続出。なんてみんなノリがいいんだ!誰かの友達なのか、どこからの紹介かよくわからないが、次々に人々が訪れ始めました。

「参加するのは考えものだけど、ぜひ観てみたい」という人も、少なくありません。かなり早めから、2本先の電柱から様子を伺う、黒い服を着た、髪の長い女性。開始時間の正午より、ゆとりをもってお越しいただいた、コレクターの森本さん、村野さん。他にも多くの人がやって来ました。

アーティストの山内氏は、いつかどこかでゲットしたらしい、JRの浴衣姿で登場。

透明ビニールで覆われたマンションの壁には、ヒューマンサイズとしてはちょうどいい大きさの、白いキャンバスがひとつ立てかけられています。

予定時間より少し遅れてイベント開始。肩に担いだ携帯カラオケで、プロデューサーの深瀬氏による進行が始まりました。まずはオークションによる山内くんへのパイ当てです。500円から始まった競りは、600円、700円と声が掛かり、次に『750円!』と言った女性に、一番最初のパイ投げ権がまわされました。『俺の価値は750円か〜。』という浴衣姿の彼の顔に、おとなしそうな女性からの一撃がもたらされました。

次は、今回の女神!(笑)、車でさっそうと現れた看護婦コスチュームの女性、栗戸理花さん。

目玉商品です。表舞台に上がるなり、カメラが集まってきました。まるでアイドル撮影大会(笑)。さっそく彼女にパイを当てる権利が、競売にかけられました。競り落としたのは、向かいのミズマアートギャラリーオーナー、三瀦氏。1000円。(安い。もったいない。)顔面にシューティング。紙皿が落ちた後のパイ汚れ顔も絵になります。ますますビデオカメラもまわります。

さてこれからが、本日のメイン・イベント、バトル・ロイヤル。地面に貼られた黒と黄色のストライプのテープ線より内側にいる人は、当てても当てられてもいいという決まり。当てられたくない人はその線の外に出ていきます。開始と同時に、それぞれ当てていきました。知らない人に突然当てられた者も少なくなかった様子。だいたいが顔めがけて。メガネを掛けている人は二度おいしいという話。

パイはどんどんなくなっていきました。ビニールで覆われた道路はクリームだらけ。その激戦区を乗用車やバイク、ヤマト運輸のトラック、通行人が通るたびに、乱闘はいったん休止し、無事に通過してからまた開始しました。通行する車の中の人のいやそうな顔、通過する自転車に付く、車輪のクリーム跡が、痛々しくもあり、可笑しくもあり。

“ビール掛けも認める”という事前のお触れどおり、ビールを持参した人もいました。かなりの盛り上がりの中、山内氏の頭上よりビールが掛けられたシーンは、一つの見所でもありました。

作家である山内氏には、やはりパイも集中し、前から後ろから当てられ、顔面真っ白。“舞踏の人”を超え、“八つ墓村”と呼ばれたオソロシキ風貌で奮戦。キャンバスにはいくつかの“流れ弾”パイが当たり、へばりついていました。足元もクリームだらけで、へたすると足を滑らせ、ずるっと転ぶ危険性あり。転ぶと全身クリームまみれになってしまいます。

山内氏が、踊り念仏か祈祷師かのように、やおら両手を挙げ、キャンバスになぐり手、そのままずるっと前のめりに倒れる。華麗なる一撃。キャンバスには彼のブラッシュストローク(ならぬハンド・ストローク)が、中央から下方にかけて流れをつくる。

そして道路に向かい、こける。同時にこける日本男児多数。

だいたいパイも尽きてきて、参加者もほぼ満足気味。このあたりで終了かな、という感じになってきましたが、先ほどの看護婦ルックの女性の衣装に、何となく近寄り、『せっかくだから脱ぎませんか?』と誘ってみました。『じゃあ。』と、ためらうこともなく承諾していただいたので、片付けの合図を出そうとしていた深瀬氏に、『あともうちょっと・・・!』と声を掛けました。

再度オークション。水着ではなく、下着である。(!)白、そして網状のタイツ、白。

結局深瀬氏が落札し、(落札価格は内緒(笑)。)下着姿のどこに当ててもいい権利を得た。決めかね、迷って、まず胸に、そのあとお腹から下腹部へとパイを動かした。その後彼女が応戦し、深瀬氏の顔をパイで両ばさみにして、幕が閉じました。

参加者に不満そうな者もなく、被害者と思われる者もほぼなく、皆楽しく満足出来たようです。ほとんどの人(参加者約23名)が、顔面を真っ白にしたまま、笑顔でした。何か皆、余韻を楽しんでいるようでした。

かくいう私も、最後の最後に、パイ投げの本家から、顔面パイを授かりました。バトル・ロイヤルの時も、かなり激戦区にいたのに、撮影やお金のことで動いていたせいか、飛び血(クリーム)は浴びるものも、ほとんど汚れていませんでした。そこで、ビデオ片手で来ていたパイ投げの本家、下関マグロ氏に『君、全然汚れてないね。当たってみたいと思わない?』と言われ、かなり同意の上で、メガネの上から当てていただきました。私は結構喜んでいたようで、更に頭上にももう一枚いただきました。

この方は有名な「パイ投げフェチ」の方で、パイ投げホームページやパイ投げ掲示板、パイ投げビデオを制作している大御所(?)です。この日もかなり撮影しまわり、インタビューもしていました。(私も受けました。)大御所からパイをいただいたことで、私も無事、本日の願望を達成することが出来ました。

願望達成といえば、これを実現するが夢だった山内氏。開始前、通路に並べられたパイを見て、彼が『夢のような光景だ〜。』と叫んだのがギャラリー(マンション)室内にまで聞こえてきて、可笑しかった。終わった後も、『夢が達成できて良かったです。』と、両手を挙げて、何度もガッツポーズをしていました。“八つ墓村”顔面クリームたくりの白顔で。笑える。

片づけは、参加してくれていた方のみでなく、参加したかったが終わってしまっていて残念(着替えも持ってきたのに)という人たちが、すすんで片づけを手伝ってくれたのが、また嬉しい光景でした。当たれなかったからと、私の顔に付いたクリームを掬ってなめてくれる若者もいました。(顔も知らずに(笑)。)

『皆さんの日頃の行いがよかったからでしょう。』とはじめに司会の深瀬氏が言っていましたが、この日は晴天。

片づけるのももったいなく、余韻を楽しみたい気分でしたが、(わたしもそのままの顔でだいぶいた。もっといたかった。)近所の知らない人たちにはかなりの異様さに見えていたようです。たまたま挨拶回りの際に不在だった、マンションの住人の女性が帰ってきて、何も知らされてないうえ、自分のマンションまわりがクリームだらけなもので、『あきれて物も言えない。』と、かなり卒倒されていらした。

パイ投げ終了は、正味1時間後の午後1時。道路の水清掃、床磨き等が一段落したのは午後3時。この頃には、見るだけ参加をしていた人々(約25人)の何人かが、向かいのミズマアートギャラリーで行われる、個展中の宇治野宗輝さんのトークショーのために、戻ってきていました。

その後スタッフ(お手伝い仲間約8名)、作家山内氏と遅い食事。『水泳の後のようだね。』と、誰もが口々に、心地よい疲労に浸っていました。皆、どこかしらにクリームが付いているのだが、あまり気にしていない。この日はそのまま一日中放心状態が続いた・・・。

あれが何だったのか、まとめられるのは、おそらくかなり先のことになるでしょう。
語られることだけは、噂として、話題として、伝説として、拡がっていくことでしょう。
おそらくそれでいいと思う。そういうものだと思う。
とにかく参加した者としては、楽しかった。それに尽きるのです。

(匿名希望 2X歳)

山内崇嗣「絵画展」
2001年3月3日〜3月30日
東京都渋谷区神宮前5-47-8メゾンリベラール103

山内崇嗣「パイ投げ」
2001年3月24日 正午より
メゾンリベラール103とミヅマアートギャラリーの間の道路(ラスチカス手前)