長沢裕 「希望の花束」
第2回サンキューアートの日 参加作品
日時:2002年3月5日(火)〜10日(日)
場所:銀座 晶アート2階

「希望の花束」
報われぬ思い

 長沢裕(ながさわゆう)は、自分自身がインスタレーションの一部となる形態のコミニュケーション・アートを1999年から発表している。この「恋愛プロジェクト」ともいうべき連作は、作家を含むインスタレーションが、観覧者に対し、「観覧者からのコミュニケーションを待つ」旨の視覚的メッセージを投げかけるものである。
 例えば「恋文」(1999年)では、作家は、長さ4m10cmの将棋板の端に座り、遠い反対側の端から、観客からの一手を黙って待ちつづける。ただ、美術作品であるだけに、結局は誰も駒に手を触れない。このため、一手が指されることもない。作家はただ待ちぼうけを食うのである。
「恋文」

「六千円の支払いより」
 また「六千円の支払いより」(2000年)では、作家は椅子に座り、交際相手の募集広告の看板を頭にかぶり、楠木を削り出した巨大なチューリップを手に持って、交際希望者からの連絡を待ちつづける。「手がかり」(2000年)では、作家は楠木を削り出した巨大なチューリップを円形に並べた中心で椅子に座り、声をかけられるのを待ちつづける。
 こうした、観客ないし「未だ見ぬ相手」に対するコミュニケーションの申し出は、作家が寡黙を保つが故に当然の如く失敗し、結局は宙吊りになったディスコミュニケーションの悲哀と、その戯画化によって惹き起こされたペーソスが残る。観客は自らの体験を重ね合わせ、風采の上がらない、しかし全く対象外という訳でもない作家の風貌も併せ、愉快に思ったり、心に痛みを感じたりするだろう。さらに、自分の心の制御しがたい動きを認識し、ばつの悪い思いに駆られるだろう。そのあと、ちょっとした時間の流れが、心のひだを癒すまで。
                                深瀬鋭一郎

 「手がかり」


長沢裕

1975年 福島県生まれ
2001年 多摩美術大学卒業

個展
2000年 NC Art Gallery
2002年 晶アート