■展覧会概要

 昨夏の鮮烈な個展デビューで美術界の注目を浴びた、気鋭の美術家 山内崇嗣の半年振り2回目の個展である。
 初個展では、一階に「室内シリーズ」("Interior" series, 2000)のインスタレーション、二階に「反復シリーズ」("This colored pattern is this colored pattern" series, 1997〜2000)という、完成度が高い二つの世界を現出し、先端的美術関係者から高い評価を受けた。
 今回の展覧会は、いわば昨夏の延長戦。「21世紀最初のアート・スペース」を標榜して2001年元日未明にオープンした青山の非営利スペースがスポンサーになり、山内崇嗣が「あのときやり残したこと」の実現を目指したものである。その意味では、作家の最初期は、この展覧会と2001年秋に予定されているウィーンでのグループ展("Nouvel Conceptuelle")において完結を迎えるのかもしれない。

 さて、会期当初の三週間は、今や彼のトレードマークとなった、トートロジック(同義語反復的)なタブロー群による「絵画展」が開催される。
 パネルに張った柄物生地を支持体として、合成塗料、クレヨンまたは油彩で支持体の模様を拡大した形象を描く。「このうさちゃんはこのうさちゃんです。」等の題名により、「うさちゃんの模様の上にうさちゃんを描く」行為と、「うさちゃんの模様の上にうさちゃんが描かれた」作品の成り立ちを端的に示す、といった方法論は変わっていない。
 もっとも、柄物モチーフ自体が二重三重構造となったり、柄物生地の上に描かれる同一の柄物生地自体が、静物として描かれていたり、瓶を包んでいたり、三次元構造として鳥瞰される形となっていたり、純絵画的な発展がみられる点が面白い。「抽象を具象として描く」不思議な作風の深度は一層増している。

 会期スタートから三週間後には「パイ投げ大会」が開催される。そして、その後一週間、パイ投げの結果として成立したタブローほかの遺物が展示される。 指先に顔料をつけてラスコー洞窟の壁をなぞる行為と、青山の路上で支持体に向かってパイを投擲する行為は、果たして芸術的創造行為として等価であろうか? それは貴兄貴女に判断していただくより他はない。芸術は主観的行為だからである。

                                                       深瀬鋭一郎
←晶アート
展示風景
■コメント

 パーはグーよりも強い。このルールの根拠は何か。一般的な解釈によると、パーは紙、グーは石のシンボルであり、紙は石を包めることからパーはグーに勝つとされる。
 しかしこの説明に、幼いころの筆者はどうも納得いかなかった。石は紙を破ることができるじゃないか。それに、たしかに紙は石を包めるけれど、じゃあ、包み紙のほうが中身よりもエラいというのか──。
 いまでこそ良識的な市民生活を送る筆者は、根拠が不明確なルールも「慣例」としてあいまいに受け止めているが、当時はジャンケンの基本ルールさえ飲み込めなかった。たぶん頭が悪かったのだろう。このような記憶を思い出したのは、他でもない、昨年の夏に山内崇嗣の個展を見たからである。
 うさちゃんの柄の上にうさちゃんを描くって、いったい何ですか、それは? 既製品(うさちゃんの柄の生地)を作った者の立場はどうなんですか? 美術とかいうものの文脈や制度を前提にすれば、そりゃあ、支持体と絵画の関係とか、オリジナリティ、表徴、トートロジーとか、そんなキーワードで説明できるのかもしれない。たしかに山内の作品は、<美術理論>なるルールを適用して接することも可能だ。そして、これらのキーワードはある程度の理解を促すことだろう。
 ただし、ある程度どまりなのである。従来のルールに基づくだけでは、十分に山内作品を把握することはできない。わかったつもりにはなれるけれど、本当にわかったとはいいきれない。おそらく山内当人さえも、なぜ「うさちゃんの柄の上にうさちゃんを描くのか?」と根拠を問われれば、取り繕った回答しかできえまい。というのも、彼の作品は理論に裏打ちされながらも、直観によるところも大きいからだ。
 理論と直観を併せ持つ強みが、山内崇嗣にはある。彼はグーのように強固な理論の持ち主であり、そしてパーである。さらにいえば、彼の作品にとっては、グーとパーが「あいこ」なのである。

                                                         新川貴詩
■出品作品タイトル

この橙色の格子模様は、この橙色の格子模様ですか? (右の作品→)
Is This Daidai-iro pattern of Plovers this Daidai-iro pattern of Plovers?
2001, 91 x 116.7 cm

この白色のレース模様だと思う。この白色のレース模様は、
I feel this is Shiro-iro pattern of laces,this is.
2000, 45.5 x 38 cm

この青色の格子模様は、この青色の格子模様ですか?
Is This Ao-iro pattern of Plovers this Ao-iro pattern of Plovers?
2000, 60.6 x 50 cm

この緑色の格子模様は、この緑色の格子模様ですか?
Is This Midori-iro pattern of Plovers this Midori-iro pattern of Plovers?
2000, 59.4 x 84.1 cm

この緑色の花柄模様は、この緑色の花柄模様ですか?
Is This Midori-iro pattern of flowersthis Midori-iro pattern of flowers?
2000, 59.4 x 84.1 cm

この緑色の格子模様は、この緑色の格子模様ですか?
Is This Midori-iro pattern of Plovers this Midori-iro pattern of Plovers?
2000,


山内崇嗣

■略歴
1975年 石川県金沢市生まれ
1998年 武蔵野美術大学油絵学科卒業
      昭和シェル現代美術賞受賞(入選)

■個展
2000年 「山内崇嗣展」伊藤忠ギャラリー(現:エムアンドアイアートシステム)(東京)
2001年 「山内崇嗣・絵画展」晶アート(東京)
2002年 「山内崇嗣展」galleryPAX(東京)

■グループ展
1996年 「灰塚アースワークス」広島県総領町
1998年 「ピッチシフター」企画 / バー青山(東京)
     「武蔵野美術大学卒業制作展」武蔵野美術大学(東京)
     「灰塚アースワークス」広島県総領町
1999年 「ワンディワンショウ」フリー・スペース・スリー(東京)
     「灰塚アースワークス」広島県総領町
2000年 「豪華粗品」金沢市民芸術村(石川)
      「灰塚アースワークス」広島県総領町
2001年 「SAP ART-ING TOKYO 2001」SAIZON ART PRPGRAM(東京)
     「What's the difference between.......」クンストビューロ(ウィーン)
2002年 「omolo.com/expo」switch point(東京)