あいだだいや 「百万円!」
日時:2001年4月1日(日)〜30日(祝)
場所:青山 晶アート (メゾンリベラール103)
経済の価値

 「もし100万円を素材とした芸術作品があったなら果たしてそれはどれだけの価値があるのだろうか?」
 これは、あいだだいやが、本展覧会の展示作品を制作した際の問題意識であり、かつ作品題名そのものでもある。自身がアルバイトで貯めた100万円を、銀行で1万円札のピン札100枚に交換し、それらを横5列、縦20段に配置して、縦2m、横1m、厚さ1cmのアクリル版で表裏両側から挟み込んだものだ。
 単純に考えれば、答えは簡単だ。原価法に基づけば「価値=素材価格+工賃+意匠代+流通マージン」である。時価法に基づけば「価値=市場の流通価格」である。
 もっとも、この話は実はもっと込み入っている。現在町中で使われているお札は、割高にも割安にも売買され得ない(交換ならできる)からである。よって、工賃他のコストを買主に転嫁できるかどうかを考えねばならない。ただ、デビューしたての作家の立体として考えた場合、素材価格(100万円+アクリル版代)さえも支払おうとする者は稀かもしれない。

 もうひとつ、この作品に特徴的なことは、一枚一枚のお札があたかも版画であるかの如く展示されていることである。
 一般に「版画」は、芸術作品を制作する意図の下に、古典的印刷技法を利用して、作家自身、または作家の監修の下で職人が原版を制作して刷り上げ、作家がそれらの刷り上がり状態等をチェックしたうえでサインや限定番号を記したもの(入れない場合もある)である。現代では、1万部以上の多数が制作されることもある。オフセット印刷といった大量印刷に耐える技法が用いられることもある。
 では、旧大蔵省印刷局の技官が芸術意図も持って、お札の原版を刻んでいたらどうであろうか。他の者がその技官の意を汲み取って、芸術作品の一部として発表したら、そこにどのような効果が発生するのであろうか。
 赤瀬川源平、太田三郎、森村泰昌、宮島達男など多くの作家が、通貨の意匠を活用し、または素材として作品を制作していることは、それらが経済に関して有するコンセプチュアルな象徴性のみならず、デザインの美しさ、描線の美しさに惹かれた部分もあるのだろう。

 ちなみに、作家「あいだだいや」の弟の名は「あいだもんど」という。ふたり合わせて「だいあ+もんど」である。
                                     深瀬鋭一郎
■あいだだいや

1976年 3人兄弟の長男として生まれる
2000年 東京造形大学卒業
2003年 情報科学芸術大学院大学( IAMAS) 卒業
■個展
2001年 「百万円!」晶アート
      「百万円!」 コオジオグラギャラリー
■グループ展
2001年 「blank hunting」下高井戸商店街
      「信用ゲーム」NTTインターコミニュケーションセンター
2002年 「June Bride」ギャラリー千(大阪)